社会調査されてみる

nekomakura2007-07-06

毎日新聞がウェブサイトで提供している「毎日ボートマッチ(えらぼーと)」を早速やってみた。
サイト内の解説によると、「有権者参院選への関心を高め、投票率アップに結びつける」ために作ってみたとある。ポリティカル・コンパスみたいな、あからさまに政治思想上の立ち位置を明らかにするものではなく、目の前の参議院選挙の投票指標になることを目指している、というのが建前のよう。
まぁ、毎日新聞の本音は無料で有権者の意識調査ができることだろう。けっして善意の無料コンテンツなんかではなくて、どの性別のどの年代のどの地域からアクセスした利用者が、どういった政治的価値意識を持っているかが筒抜けになる設問構成になっている。毎日新聞はこのデータを利用して当日の投票行動も予測したり、記事の論調や特集企画を合わせることもできるようになる。もちろんネット利用者に限定されるバイアスはあるけれども、それが逆に若年層に多い無党派層の動向をつかむメリットともなりそうだ。
ただほど怖いものは無い。毎日新聞、なかなかの策士です。



回答を順次クリックすれば次の設問へツラツラと進んでゆく。軽快で見た目も悪くない。
でも、早速ツッコミどころが満載。

問2.貧困層の増加が指摘されています。所得格差が拡大していると思いますか。
1.思う
2.思わない。

これは「思わない」ので2番!!!
にして、次は何かなーとワクワクしてみる。
で、第三問。

問3.格差社会是正のための対策としてふさわしいと思うものは何ですか。
1.正社員登用
2.最低賃金引き上げ
3.同一労働、同一賃金の徹底
4.非正規社員の労働基本権の確保
5.職業訓練の拡充

ちょ・・・・
これじゃあ第2問の意味がない
しかも回答は強制で、どれかをクリックしなければ先に進めない仕組み・・・・


設問のヒントとして設置されている「ミニ解説」も「格差社会であること」が前提になっていて、「無回答」という選択肢は用意されていない。そもそも第2問目も「貧困層の増加」なんて一言を挿入している時点で明らかな誘導尋問。少しでも社会調査をかじった者なら、回答のワーディングした奴出てこーい、となります。
ちなみに4問目が「地域間格差」、5問目が「ふるさと納税」であり、毎日新聞は利用者に「格差社会」で有無を言わせない勢いです。


もうこの時点で、

  1. これだけ頻繁に社会調査をやっている大手マスコミに社会調査(質問紙調査)の専門家がいない
  2. もしいたとしたら悪質な誘導尋問であり、専門家としての倫理観が欠如

の二つのうち、どちらかであることが判明しました。さて、どうしましょうか ( ゚Д゚)y─┛~~


まぁ、とか思いつつ最後まで楽しんだわけですが。
実際に、自己申請で質問項目を重みづけして解をはじき出す方法は適確だと思うし、参院選の候補者との比較機能は便利(やや見にくいけれど)。
これだけの仕組みが組めるなら、あんな簡単な選択肢の設計ができないはずはないよなーと思わずにはいられない。
ただ、イデオロギーの二項対立でものを考えることができなくなってから早、十年以上。もっと早く、こういったツールが社会に浸透してもおかしくなかったはずなので、ひとまずはどういう使われ方をするのか見てみたい。回答に関する粗データをエクセルとかSPSSとかで提供してくれれば立派な社会貢献なんだけど、でもやっぱり毎日新聞にそこまで期待はできないよなぁと思う今日この頃でした。