刑訴改正

nekomakura2007-06-27

少し前のニュース。
今月初めに衆院を通過していた『犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律』が20日参議院で可決、成立した。反対に回るおそれのあった民主党も賛成に回ったことで会期内での成立となったようだ。



以前、全国犯罪被害者の会(あすの会)のイベントをレポした手前もあり、進捗がずっと気になっていたもの。あすの会をはじめとして法案成立に関わった方々の尽力は、今後、不幸にも犯罪被害者となってしまった人々の損害回復をいくらかなりとも促進するものになるだろう。
また、先のシンポジウムにおける、あすの会の岡本勲会長の「これまでは傍聴席にとどめおかれたことによって、被告人・弁護士側の嘘にも反論のしようがなかった。嘘つかれ放題だった。参加できるようになれば、そうやって嘘をつかれることも少なくなるだろう。」という呟きを思い出すにつれ、この制度が法廷におけるさらなる真実発見に資するものであると確信せずにはいられない。


そこでどうしても気になるのが日弁連だ。組織内で意見が割れているにもかかわらず、今回の法案成立にあたっても早速、会長声明が出されている

当連合会は、被害者参加制度が、以下のような深刻な問題点を含み、わが国の刑事訴訟構造を根底からくつがえすものであるとして、その導入に強い危惧の念を表明し、再三にわたり慎重な審議を求めてきただけに、これが聞き入れられず、性急に立法がなされたことは極めて遺憾である。

根底から覆して何が悪いのだろうか。
法制度など所詮、人為による政策の産物。その(些末な技術的改正ではなく)「根底」が変わるということは、制度そのものを承認した民意のレベルにおいて意識変化があったと考えられるのであり、一職能集団でしかない弁護士会はむしろ積極的に国民の意識変化の実態をつかみ取り、日常の業務をアドジャストしてゆくことが求められるのではないだろうか。
さらに言えば、政治活動は個々の弁護士が自由にやればよいのであって、弁護士法を根拠に設立された公益団体が強引に意見表明を行う姿はどう見ても美しくない。


念のため付け加えておけば、被害者参加の進展は将来における司法制度の根本的な変革に結びつく可能性がないとはいえないにせよ、今回の法改正が「根底」というほどのものかは疑問である。また会長声明で触れられている論点がすでに先日のシンポジウム内で全否定されているのを見ると、平山正剛会長はいったい誰に向かって気を吐いているのだろうかと思う。


論点がズレてきたのでここいらで打ち止め。「損害回復」のための刑事司法が一段階前に進んだ今、やはり次の目的地が気になるところだ。