政策評価国際シンポジウムに行って来ました

nekomakura2006-06-27



2006/07/26追記
総務省のウェブサイトにて「政策評価国際シンポジウム開催結果」がうpされてます。詳しくは、そちらをドゾー。


さきの日曜日に早稲田大学で開かれた政策評価国際シンポジウム(PDF注意!!!)を聴講してきました。総務省早稲田大学大熊記念大学院公共経営研究科(長っ)が主催。
以前、総務省のWebサイトで告知を見つけて予約。この分野は全く素人なもので興味本位での参加でした。
しかも所要のため午前の部はほとんど出られず、村松先生の基調講演も聞けませんでした。残念。


ところで、まず「政策評価」とは

政策評価は、各府省が所掌する政策について、その効果を把握し、必要性、効率性、有効性等の観点から評価を行うことにより、政策の企画立案や政策に基づく活動を的確に行うために重要な情報を提供するもの

とされております(政策評価の総合窓口)。
今回のシンポジウムの内容もいずれ上記のサイトに掲載されると思うので今回は簡単な要約と考えたことなど。

竹中平蔵総務大臣のごあいさつ》

午前中はサンデープロジェクトの出演のため、午後一番にご挨拶。

政策を決めることは予算を決めること。
しかし、これまでは予算を作るために政策を決める、という有様。
そもそも、政策決定には民主主義のプロセスが重要であり(それなしには政策そのものがありえない)、そのためには政策パフォーマンスの向上は社会の周知が必須である。すなわちWell Informed Publicが要請。
政策評価はそのための制度であり、まだまだ政策サイクルは十分確立しているとはいえないが、小泉内閣以降徐々に進展してきている。

最後の部分が二、三度強調されておりました。まあ、政策評価制度についての議論は十年前からなされてはきたようですけれど(政策評価制度に関する経緯)。
颯爽とやってきて颯爽と帰っていかれましたが、10分ほどの挨拶を全く原稿も何にもなしで完遂。このあたりは、さすが大臣、と感服いたす次第。

《パネルディスカッション(ラフメモ)》

その後、コリン・タルボット教授、スティーブン・ケルマン教授、金本良嗣教授、丹羽宇一郎政策評価独立行政法人評価委員会委員長(伊藤忠商事会長)が壇上に上ってパネルディスカッション。
論点は①日本の政策評価の特徴、②政策評価を予算削減に繋げられるか、③政策評価の社会への告知のしくみ、の三点。特に①は午前中の各教授らの講演などを踏まえて議論された。

(あくまで管理人が把握した形です。抜け漏れあります。正確さは保障できませぬ。なお()内は管理人による補則です)

①日本の政策評価の特徴
金本教授:日本の政策評価の特徴は、その導入が立法によって全官庁一括で始まったこと。二点目は、それが自己評価でなされること。
誰が評価表を作っているかというと、各官庁の各部署各課の係長レベルであり、彼らにとっては「余計な」仕事という側面も。これは政策決定のもっとも後の段階で政策評価を行うからでもある。自然につじつまあわせになってしまう。
その政策評価もあまり社会一般に読まれてはいないため、外部からのチェック機能という当初の目的が十分達せられていない。
また、分析者は政策評価スペシャリストではない。そのため分析のレベルは低い。


タルボット教授宮本武蔵五輪書にあるように、多くの情報をあつめてやっと有益なインテリジェンスを引き出せる。アメリカでは政策立案に役立たない評価はありえないし、何より評価を内部でおこなうか、それとも外部機関に行わせるかがポイント。


ケルマン教授:チェック&バランスのあり方は国によってそれぞれ。日本の現在の評価制度はその点で英米のそれとは異なる。ただ、内部評価では評価者の立場を危うくするような(つまり、その政策が取りやめになったり、完了したとみなされる)評価には繋がらないのでは。あと、これは印象だけれど、日本の政策評価制度は「政府の縮小」を目的としているのではないか(「政府・政策の改善」とは違うということ?)


丹羽委員長:これまでは政府・政策の透明性も効率性も全く考えられてこなかった。だから今回の評価制度の導入だけでも大きな進歩。
日本の評価制度の特徴として、もう一点、数値目標の導入がある。内部評価は「グレー」なものに違いない。ただ、内部評価→外部による二次的な把握・評価という点で、数値目標があることが役に立つ


金本教授政策評価導入に「政府の縮小」の目的があったかどうかについて、必ずしもそれだけとはいえないのではないか。もともと道路族が利権拡大のために政策評価導入を唱えた経緯がある(!!!)

政策評価を予算削減に繋げられるか?
丹羽委員長:(企業経営の経験からも)各省庁の役職者の責任を明確にしていかないと、十分なマネジメントはできないと考える。無責任体制はダメ。いまのままでは、まだまだ大きな改善はないだろう。


金本教授:公共事業の評価などでは、予算への反映は始まっている。また、短期的なパフォーマンスの良し悪しだけで予算をカットしていいというものではない。予算を増大することで、パフォーマンスが改善することはありうる。財務省主計局の理解も必要。


ケルマン教授アメリカでは予算策定に政策評価はユーズフルなものとなっている。評価情報は「パブリックドメイン」化して(社会の認識を引き出すようにして)おかなかればいけない。

政策評価の国民への告知など

丹羽委員長:全国各地でシンポジウムを開いてきたが、国民にとって分かりやすい、身近な話題には反応がたいへんよい。分かりやすく、身近な話題、素人の私が理解できるぐらいがいい。
また、政策評価には「経験」なども重要なので、やはり人材養成は欠かせない。


タルボット教授アメリカやイギリスでは郵便番号をWebサイトで入力すれば、当該地域にかかわる政策評価を取り出せるところも。(地方自治体レベル?)


ケルマン教授:まず、評価のプロフェッショナル養成に関して言うと、日本の行政担当者の養成は法律学に力を置きすぎている。行政評価を学んでも、官公庁で職を見つけられない現状。官庁文化を変えるべし!・・・・ちょっと私、言いすぎたかな?(会場笑)
あと、広報に関しては、行政のパフォーマンスの向上がその地域の不動産価格を引き上げるような効果がある。例として教育、また空気のクリーン度など。

《感想などなど》

タルボット教授はなんで五輪書なんて知ってるんだろう。日本人でも読んでないのが多いのに(ここにも一名)。
さて、政策科学系に関心を抱きながら今日まで政策評価・行政評価関連にほとんど無知だった己を反省しつつ、ただ、やっぱり一般庶民の感覚からすればやはり行政評価なんて敷居の高いトピックだと思うわけです。
これはインフォームド・コンセントアポリアでもあるんだけど、評価表を読んでも結局政策の良し悪しの判断は専門家に任せざるをえなかったりする。Well Informed Publicは理念としては理解できても、マスコミや研究者を飛び越えてダイレクトに有権者に情報が届くというのは難しいのではないだろうか。


その上で考えられるオプションとして、丹羽委員長のより関心の高いトピックから攻める方向性は正しいし、またケルマン教授が例示したように、教育や環境政策が不動産価格に反映するようになれば、「納税への対価」とは別の利害関係が有権者と政府との間に生まれることになる。分かりやすいインセンティブを作ることができれば、政策評価だけでなく公共政策のあり方にまで社会の関心が高まるというのはありうる話だろう。
ひとまず不動産関係者・団体に行政評価の利用を呼びかけてみますか。でも、おそらく文書化された評価書がなくったって、この狭い国土の不動産鑑定士はこれまでも風評を頼りに地価に値付けしているだろうけど。

《広報の方法などなど》

もちろん、行政側が国民への告知方法をいちいち考えなきゃならないというのもナカナカ日本的というか、パターナリスティクだなあという印象をうける。だけど、ネットに掲げても見てもらえない以上、ここにも何らかの政策的対応がなされないと行政評価そのものが衰退しかねないわけで。
そこで、いくつか考えられる広報のあり方として総合学習のネタ作成②ゲリラマーケティングの二種類ぐらい考えてみた。

①は学校の先生向けの教材作りなど。これは、総合学習の時間に教えるネタが無い、という声を聞いたことがあるから。先生にネタを提供し、学校教育を通じて子供時代から行政評価に慣れさせるというのはなかなか効果的では?

②についていうと、「ネットに掲げても誰も読まない」=「自発的に読もうとするだけの関心を呼ばない」と解釈して、反強制的に政策評価表を読まざるを得ないようにする、という方向性。
たとえば、アナログメディアである印刷技術の利用。もちろん、新聞広告なんかじゃ直廃品回収行きの可能性が高い。だからもっと生活臭のあるもので、日常生活で必然的に目に入ってしまうものへ評価書を印刷してしまってはどうかと。
たとえばトイレットペーパーとか、ポテトチップスとか。プリングルスセブンイレブンで売ってましたよ日本語版が。
さらに、こういう取り組み自体がニュースになる → マスメディアの認知度も向上(かなり画餅)、が期待できるのではないかな?

②は冗談としても、①は結構需要があるのでは?いや、世界のあらゆる政府に先駆けて是非とも総務省には②をやってみてほしいですね。どうでしょう竹中大臣。サプライズ!サプライズ!


追記
写真は早稲田大学構内にある「Uni.Cafe125」の  スモークサーモン&カッテ−ジチーズベーグルのランチセット。ナスのトマト煮がおいしかったです。

追記2
プレゼンで言及されていた合衆国政府のExpectMoreGovernmentInnovatorsNetwork。そしてIBMthe Center for The Business of Government