グッド・デザイン賞の審査拒否について

nekomakura2006-08-26

(財)日本産業デザイン振興会が主催するグット・デザイン・アワードが、一時審査を通過した「アダルトグッズ」に対して審査拒否をやらかしたそうです。
グッドデザイン賞アダルトグッズはNo!1次突破も… (ZAKZAK)http://www.zakzak.co.jp/top/2006_08/t2006082535.html
それによると

夕刊フジの取材に対し、事務局は「多忙な審査員は審査前に初めて現物を見る。女性など一部審査員から展示自体に批判があり、直前になって対象外となった」と説明。「事務局としては展示の方向だったが、アダルト関係は時期尚早だった。今後しばらくアダルトは無理」と、“エロの壁”を強調した。

ちょ・・、まず、その審査員を対象外にしようよ。

なにより、そもそもこの女性審査員の発想は、通産省日本産業デザイン振興会は通産省の外郭団体)がよりよいと判断した「ものづくり」を称えることで、その産業の商品開発に一定の方向付けを示してゆく、というグッド・デザイン賞の目的にも反する。


このグッド・デザイン賞の授与を通じて、政府側は見た目や機能性、操作性なんかの「推奨基準」を示し、一方でその当該産業側は製品開発で求められる水準や開発方針を見定めることができる。
シグナリング効果によるソフトな産業統制ということになるんだろうけど、その点はグッド・デザイン賞の評価基準が単純に「見た目」だけを重視していないことからも裏付けられるだろう。
もし、製品そのものに問題があるならば審査した上で落選にすればいいし、それもまた「いかなる品質向上に努めればいいか」という情報を創出することで当該産業の発展に貢献する。どう考えても国民の健康と安全に「密着」した産業なんだから、その安全性を公共機関が審査することは問題ないし、「生活の向上と産業の高度化」というの大義名分にも十分合致する。


こういった洗練されたソフトな統制・コントロール政策こそ「グッド・デザイン」にほかならない。
だからこそ、事務局側の責任は審査拒否云々だけじゃなくて、そのような政策目的を理解していない審査員を登用したことにもある。
さらにいえば、もし、その「一部の審査員」の内面に、性産業への差別意識みたいなものがあるとすれば、人間性のレベルで審査員に値しないはずだ。せっかくの50周年がこんな審査員のために傷物にされたとすればたいへん残念なことだと思う。


また審査の困難性というエクスキューズについては、どう考えても不自然。以前に女性用生理用品が受賞したことだってあったんだから。(「エックス橋」さんの指摘より)

企業側(株式会社 典雅)も今回の審査拒否についてコメントを出しているけれど、そちらのウェブサイトも相当に洗練された出来。ほんとうに「ものづくり」に拘った企業なんだろうな。こんな瑣末な事件にめげず、よりよいものづくりに励んでもらいたい。